新人看護師への先輩のきつい言葉は普通?|パワハラだと気づけなかった1年目の私
目次
きつい言葉が、あなたのせいとは限りません。見分ける手がかりは、言葉の中身にあります。
私は看護師になってから、4回職場を変えました。最初は急性期の病院で、そこが1年目の職場です。
当時の私は、先輩のきつい言葉を「それが普通」だと思っていました。
今振り返ると、普通ではありませんでした。
材料は、私の1年目の体験と、厚生労働省・日本看護協会の指針や調査です。
1年目の私が、毎日言われていた言葉
1年目の病棟で、先輩から何度も言われた言葉があります。
「私だったら、あなたみたいな人に看護はしてほしくない」
言い回しは日によって違いましたが、言われていることは同じでした。ほかの場面でも、きつい言葉が当たり前のように飛んでいました。
私は「自分ができないから言われるんだ」と受け止めていました。新人は、こう言われて育つものだと思っていたからです。
辞めた理由は、先輩の言葉だけではありません。忙しさと緊張感、きつい言葉が重なって、体に出ました。
入って半年ほどで、体重が10キロ減りました。生理も、いつの間にか止まっていました。
そこから辞めると決めるまでの順番は、看護師を辞めたいのに決められないときに書きました。
今の私から見ると、あの職場は、きつい言葉が日常になっている職場でした。ただ、それに気づいたのは、職場を変えたあとです。
指導とパワハラの線引き
見分ける手がかりは、言葉が「仕事のやり方」に向いているか、「人」に向いているかです。
仕事のやり方ではなく、人を否定する言葉は、指導とは呼べません。
看護の現場では、命に関わる場面で強く止められることもあります。厳しい先輩が、全員パワハラをしているわけではありません。
国の指針では、3つの条件がそろうもの
職場のパワハラ(パワーハラスメント)は、厚生労働省の指針で、次の3つを全部満たすものとされています。
1つ目の「優越的な関係」には、先輩も入り得ます。知識や経験が豊富で、その人の協力がないと仕事が回らない同僚の言動も含まれる、とされているからです。
新人にとっての先輩は、まさにその立場です。手順を教わる相手で、夜勤を一緒に回す相手でもあります。
新人が出会いやすい3つの型
指針は、パワハラを6つの型に分けています。新人が出会いやすいのは、そのうち次の3つだと思います。
| 型 | 例 |
|---|---|
| 精神的な攻撃 | 人格を否定する。必要以上に長く厳しい叱責や、人前で大声で威圧的に叱ることを繰り返す |
| 人間関係からの切り離し | 無視される。一人だけ輪から外される |
| 過大な要求 | 教わっていないことを、できて当然として責められる |
残りの3つは、身体的な攻撃、過小な要求、個の侵害です。ただし指針は、当てはまるかどうかは状況を総合して判断する、としています。
この記事で「これはパワハラです」と言い切ることはできません。
迷ったときの3つの質問
言われた言葉が気になったら、次の3つを自分に聞いてみてください。
1つでも引っかかるなら、一人で抱えずに相談していい言葉です。当てはまるかどうかの判断は、相談窓口と一緒にすれば十分です。
きつい言葉が「普通」「当たり前」に思えてしまう理由
きつい言葉を受けていても、新人はそれを「普通」だと思いやすいです。私の場合、理由は3つありました。
- 比べる職場がない。1か所目なので、ほかの職場の言葉づかいを知らない
- 周りの様子を、自分のことと結びつけにくい
- 「できない自分が悪い」と思いやすい
2つめについて、私の同期は早い段階で病院を辞めていき、今は誰も残っていないと聞いています。それぞれの理由は、私にはわかりません。
それでも当時の私は、周りの様子と自分のつらさを結びつけて考えられませんでした。目の前の仕事で精一杯だったからです。
3つめは、新人ならではです。実際にできないことが多い時期なので、言われた言葉を全部「自分のせい」として受け取ってしまいます。
看護の職場の暴言やハラスメントは、数字にも出ています。
日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、この1年に職場で暴力・暴言・ハラスメントを受けた看護職員は49.3%でした(回答4,430人)。
この数字には、患者さんや利用者さんからの暴言なども含まれます。パワハラだけの割合ではありません。
それでも、受けた人のうち43.0%が、した人に「上司(看護職)」を挙げていました(複数回答)。
回答者は日本看護協会の会員で、平均年齢は43.3歳です。新人だけの数字ではありませんが、つらい思いをしているのは、あなただけではありません。
職場を変えてはじめて、前の職場の言葉が「普通」ではなかったと気づきました。比べる相手ができると、見え方が変わります。
「3年は同じ場所で」と思っていた
きつい言葉を受けても辞めなかった理由が、もう1つあります。「すぐ辞めたらいけない」と思い込んでいたことです。
転職を繰り返す人に見られたくなくて、「まず3年は同じ場所で頑張る」と決めていました。
そのうえ、就職祝い金に「1年たたずに辞めたら返す」という決まりがありました。だから、特に「1年は」と思っていました。
親の意見も割れていました。母は「3年くらいは頑張らないとね」、父は「合わないなら辞めた方がいい」。両方の言葉を受けて、迷いました。
調べてみると、「看護師は3年勤めるべき」という公的な決まりは見当たりませんでした。
保健師助産師看護師法、看護師等の人材確保の促進に関する法律、新人看護職員研修ガイドラインのどれにも、勤務年数の定めはありません(確認した範囲で)。
1年目で職場を離れる人は、毎年います。
日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、2024年度の新卒採用者の離職率は8.4%でした(回答病院3,435)。
これは採用した年度のうちに辞めた人の割合で、転職も含みます。3年以内に辞めた人の割合ではありません。
祝い金や修学資金の「何年勤めたら返さなくていい」は、職場ごとに違います。手元の契約書で確かめてください。
私が最後に辞めると決めた順番と、祝い金を返したときの話は、看護師を辞めたいのに決められないときに書きました。
「3年」は、私が自分で自分にかけていた思い込みでした。
言い方がきつい先輩に、その場でどう返すか
言い返すより、話を「仕事のやり方」に戻す返し方をおすすめします。人を否定する言葉に同じ強さで返しても、次に何をすればいいかは見えてこないからです。
1年目の私は、言い返すことすら考えませんでした。なので、ここで挙げる返し方は、私がその場で使えたものではありません。この記事の線引き(行動の話か、人の話か)から考えた返し方です。
仕事の話に戻す返し方
言われた言葉の中から、「次に何をすればいいか」だけを拾って聞き返します。
| 言われた言葉 | 返し方の例 |
|---|---|
| 「何回言ったらわかるの」 | 「どこを直せばいいか、もう一度教えてください」 |
| 「向いてないんじゃない」 | 「次は、どの手順を変えればいいですか」 |
| 「なんでそんなこともできないの」 | 「まだ一人でやったことがないので、一度見てもらえますか」 |
| 長い叱責が止まらない | 「メモを取りたいので、大事なところだけもう一度お願いします」 |
人についての部分には、返事をしなくてかまいません。「向いてない」に「すみません」と返す必要はありません。
受け流すときに、頭の中でやること
- 言われた言葉を、「仕事の部分」と「人の部分」に分ける
- 仕事の部分だけ、次の動きに使う
- 人の部分は、あとでメモに書く材料にする
- 泣きそうなときは「確認してきます」と言って、いったんその場を離れる
返すのを後回しにする場面
患者さんの急変や、命に関わる場面で強く止められたときは、まず手を止めて従います。言い方が気になったなら、落ち着いたあとで記録に残せば十分です。
今つらい新人ができること
辞めるかどうかは、今決めなくてかまいません。先にできることが、5つあります。
1. 言われたことを記録する
言われたその日に、スマホのメモに残します。書くのは次の5つです。
- 日時
- 場所
- 言われた言葉そのまま
- 周りにいた人
- その日の自分の体調
厚生労働省の「あかるい職場応援団」も、相談するときは日時・場所・言われたこと・誰が見ていたかを整理して持っていくよう案内しています。
言葉は、要約せずにそのまま書きます。「きつく言われた」だと、あとで読み返しても、何があったか伝わらないからです。
2. 職場の中で話す
話す相手は、言った本人ではなく、その上の人か別の立場の人です。教育担当、別の先輩、師長、看護部などがあります。
院内にハラスメントの相談窓口があるなら、そこも使えます。日本看護協会も、まずは職場に置かれている相談窓口へ、と案内しています。
3. 職場の外で話す
私が辞めると決められたのも、職場の外の人に話したからでした。
転職エージェントの担当の人と面談していて、体重が減ったことと、生理が止まっていたことが話題に出ました。担当の人は、その話を親身に聞いてくれました。
自分では判断できない状態だったので、外の人に聞いてもらえたことがありがたかったです。
職場の中で話しにくいとき、話しても取り合ってもらえないときは、外の窓口があります。
公立病院に勤めている場合、病院の運営の形によっては、総合労働相談コーナーの対象外になります。
その場合の窓口は、人事委員会・公平委員会や、所属の人事担当です。まず電話で、対象になるか確かめてください。
受付時間は変わることがあるので、最新の時間は公式ページで確かめてください。
4. 体のサインを見る
眠れない、食べられない、仕事に行く前に涙が出る。こうしたことが続いているなら、仕事のことより先に受診します。
見てほしいサインの一覧は、看護師を辞めたいのに決められないときにまとめました。
5. 職場を変える選択肢も残す
異動の相談も、転職も、選んでいい道です。新人だからといって、選択肢から外す必要はありません。
次の職場の探し方には、都道府県ナースセンター(看護職向けの無料の職業紹介)、求人サイト、転職エージェントがあります。
違いは看護師転職サイトは使わない方がいい?にまとめました。
今日言われた言葉を1つ、そのままスマホのメモに書いてみてください。
まとめ
- 人を否定する言葉は、指導ではない
- 渦中にいると、それが普通だと思ってしまう
- 見分けるときは、行動か人かを見る
- その場では、言い返すより、次にすることを聞き返す
- 辞めるかどうかは後でいい。先にメモして、職場の外の人に1回話す
つらいのは、あなたが弱いからではありません。
次に読むなら、目的に合わせて選んでください。
- 辞めるかどうか決めたいとき:看護師を辞めたいのに決められないとき
- 次の職場の探し方を比べたいとき:看護師転職サイトは使わない方がいい?
- エージェントの電話が不安なとき:看護師転職エージェントの使い方
- 面接で退職理由をどう話すか迷うとき:看護師・PTの退職理由、面接での言い換え例
調べ方と限界
この記事の材料は、次の方法で集めました。
- 体験:私(えみみ)の1年目の職場での体験。職場が特定されないよう、場面をまとめ直したところがあります
- 定義:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年10月1日適用版)
- 統計:日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」(会員対象・回答4,430人)、同「2025年 病院看護実態調査」
- 制度と相談先:厚生労働省(新人看護職員研修ガイドライン・総合労働相談コーナー・あかるい職場応援団・こころの耳)、日本看護協会、e-Govの法令(2026-10-19確認)
私の体験は、1人の看護師の例です。パワハラに当たるかどうかは、職場の状況によって判断が変わります。
よくある質問
先輩の厳しい指導は、どこからパワハラになりますか?
厚生労働省の指針では、業務上必要で相当な範囲の適正な指導は、パワハラに当たらないとされています。一方で、人格を否定するような言動や、必要以上に長い厳しい叱責を繰り返すこと、ほかの人の前で大声で威圧的に叱ることを繰り返すことは、パワハラに当たると考えられる例に入っています。当てはまるかどうかは状況を総合して判断されるので、迷ったら記録を持って相談窓口に話してください。
プリセプター本人からきつく言われるときは、誰に相談すればいいですか?
言った本人ではなく、その上の人か、別の立場の人に話します。教育担当の先輩、師長、看護部、院内のハラスメント相談窓口などです。職場の中で話しにくいときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、職場の外の窓口に相談できます。公立病院に勤めている場合は、窓口が人事委員会・公平委員会になることがあるので、先に電話で確かめてください。
パワハラが理由で辞めると、次の面接で不利になりますか?
面接で「先輩にパワハラを受けたので」とだけ話すと、聞き手は判断に困ります。辞めた理由を、次の職場で大事にしたい条件に言い換えて話すのがおすすめです。たとえば「新人を部署全体で見てくれる職場で、手順を一つずつ身につけたい」と言えば、勤めた期間が短くても伝わります。面接での言い換え方は、退職理由の言い換え例の記事にまとめました。
言い方がきつい先輩に、言い返してもいいですか?
言い返してはいけない決まりはありません。ただ、同じ強さで言い返すと、話が仕事のやり方に戻らないことが多いです。「どこを直せばいいか、もう一度教えてください」のように、次にすることだけを聞き返す方が、その場を短く終わらせやすくなります。返し方を変えても人を否定する言葉が続くなら、それは返し方の問題ではありません。言われた言葉を記録して、相談窓口に話してください。
1年目で異動を頼んでもいいですか?
頼んでかまいません。通るかどうかは職場しだいですが、師長や看護部に「今の部署で続けるのがつらい」と伝えることは、職場が状況を知るきっかけになります。言われた言葉の記録や、体調の変化を一緒に伝えると、話が具体的になります。異動が難しいときは、職場を変える道も残しておいてください。
次の一歩
転職の全体マップ
転職は6つの工程に分けて考えると、次にやることが見えます。