腰を痛めたPT・看護師は現場を続けられる?|ぎっくり腰で1日働いた夫と、職場を変えた妻の話

PT・看護師 /

「腰を痛めても すぐ辞めなくていい ぎっくり腰の夫と職場を変えた妻の話」と書かれたタイトル画像。たかしとえみみが左右から紹介している
目次
  1. 夫婦それぞれの腰の話
    1. たかし:リハが1人の土曜日に、ぎっくり腰
    2. えみみ:低いベッドの病院で、毎日の介護
  2. 「辞める」と決める前に、3つに分ける
  3. 腰の負担は、職場で変わる
    1. 見学で確かめること
  4. ぎっくり腰で仕事を休むとき:迷う朝・連絡・労災
    1. 迷う朝は、介助できるかで決める
    2. 休む連絡は、短くていい
    3. 戻る前に、重い介助を相談する
    4. 仕事中のぎっくり腰と、労災
  5. 若いうちに考えておく、腰に頼りすぎない働き方
  6. 腰のことを、面接でどう話すか
  7. 次に読む
  8. 調べ方と限界
えみみ(Ns)・困り顔
今日、ちょっと腰が痛むんだよね。昔痛めたところ。
たかし(PT)・考え中
ぼくも20代でぎっくり腰をやってから、この仕事をずっと続けられるのか考えるようになったよ。

ぎっくり腰は「魔女の一撃」とも呼ばれます。前ぶれなく来て、しばらく動けなくなる痛みです。

腰を痛めると「この先も現場を続けられるのかな」と不安になります。私たち夫婦も、それぞれ腰で悩んできました。

この記事は、医療の仕事で腰を痛めた私たちが、そのあと働き方とどう向き合ってきたかの話です。治療の方法は書いていません。

腰で悩んでいる医療職の人が、この先の働き方を整理する手がかりになればうれしいです。

私はPTで、病院と老健を経て、40代で訪問看護ステーションに移りました。妻のえみみは看護師で、4回職場を変えています。

えみみは、職場を変えて、仕事中の腰の負担が軽くなりました。それでも、痛めた腰は今も痛む日があります。

痛みやしびれが強いときは、まず医療機関で診てもらってください。

夫婦それぞれの腰の話

私は1日の強い痛みで、えみみは毎日の積み重ねで腰を痛めました。痛め方は違っても、どちらも働き方を考え直すきっかけになりました。

たかし:リハが1人の土曜日に、ぎっくり腰

20代のころ、病院で病棟と通所リハを掛け持ちしていました。土曜日には、通所リハの当番が回ってきます。

その当番の日に、ぎっくり腰になりました。その日、リハの職員は私1人です。帰るに帰れず、なんとか1日働きました。

家に帰ってから、2〜3日はベッドから起き上がれませんでした。そのあともしばらく、また痛めるのではと不安が続きました。

それ以来、頻繁ではありませんが、数年に1回はぎっくり腰になります。いちばんひどかったのは、あの土曜日です。

えみみ(Ns)・びっくり
1人の日に、よく1日もったね。
たかし(PT)・しょんぼり
休めなかったというより、休むと言い出せなかったんだ。今なら、まず電話するよ。

このとき、「将来、腰に負担がかからない働き方を考えておかないといけない」と思いました。

たかし(PT)・にっこり
魔女の一撃をくらって、若いころの働き方はずっとは続かないなと。働き方にエンドフィールを感じたよ(笑)

エンドフィールは、関節を動かしきったところで感じる「ここが終わり」の手ごたえのこと。PTやOTが使う言葉です。

えみみ:低いベッドの病院で、毎日の介護

えみみが腰を痛めたのは、2つ目の職場の病院です。設備が古く、ベッドは高さが上がらない低いものだけでした。

その低いベッドで、毎日、患者さんの介護をしていました。前かがみの姿勢が、毎日続きます。

それからは、職場を変えるたびに「腰の負担が少ない現場」を、優先順位の高い希望に入れています。

次の職場では、リフトなどの設備がそろい、ベッドも高く上がりました。持ち上げる・移す・抱える回数そのものが減りました。

えみみ(Ns)・説明中
仕事中は、ずいぶん楽になったよ。でも、痛めた腰は今も痛む日があるんだ。

「辞める」と決める前に、3つに分ける

腰の悩みは、今の痛み・この職場の負担・この先の年齢の3つに分けます。3つが混ざったままだと、「辞めるしかない」に見えやすくなります。

  1. 今の痛み:まず休んで、医療機関で診てもらう。辞めるかどうかは、痛みが落ち着いてから考える
  2. この職場の負担:ベッドの高さ・リフトの有無・抱える回数・1人で介助する場面の数
  3. この先の年齢:40代・50代になっても、同じ動きを毎日続けられるか

1は、時間がたつと変わります。2は、職場を変えると変わることがあります。3は、早めに考えるほど選べる道が増えます。

えみみの場合、つらかったのは2でした。職場を変えて、仕事中の負担は軽くなりました。

私の場合は、1の痛みが引いたあとに、3の不安が残りました。

えみみ(Ns)・考え中
全部まとめて「腰が痛いから辞めたい」になっちゃうんだよね。
たかし(PT)・説明中
分けてみると、辞めなくても変えられることが見えてくるよ。

3つのうち、いちばん重いものに印をつけてみてください。

腰の負担は、職場で変わる

同じ看護師やPTでも、腰の負担は職場で大きく変わります。分かれ目は、人の力だけで抱えているかどうかです。

国の指針にも、同じことが書かれています。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)は、介護・看護の作業について次のように定めています。

  1. 移乗・入浴・排泄の介助で、全介助の人にはリフトなどを積極的に使う。原則として、人の力だけで抱え上げない
  2. ベッドのそばの作業は、立って前かがみにならない高さまで電動で上がるベッドを使い、各自で高さを合わせる

えみみがいた低いベッドの病院は、この2つ目と逆でした。 指針があっても、職場の設備がそろっているとは限りません。

リフトを入れる、ベッドを買い替えるといったことは、職員が頑張ってもすぐには変わりません。

だから、職場を選ぶときに設備を確かめる、重い介助は2人で頼むなど、自分でできるところから手を打ちます。

見るところ腰の負担が重くなりやすい軽くなりやすい
ベッド高さが変えられない電動で高さが変えられる
移乗人の力だけで抱えるリフトやスライディングボードを使う
人数1人で介助する場面が多い重い介助は2人で行う決まりがある
1日の量入浴や移乗の回数が多い回数を分け合える人数がいる

職場の種類だけでは決まりません。同じ病院や施設でも、設備と人数で違います。

PTなら、病棟やリハ室での介助に加えて、送迎での乗り降りや車の運転の時間も、腰に関わります。

たかし(PT)・にっこり
ベッドの高さは、病室や居室をのぞけば、ひと目でわかるよ。

見学で確かめること

設備のことは、求人票にはほとんど書かれていません。見学で、目で見て確かめます。

  1. ベッド:電動で高さが変わるか。病室や居室で実際に見る
  2. 福祉用具:リフトやスライディングボードがあるか。ふだんから使っているか
  3. 人数:重い介助は何人で行うか。1人になる日や時間帯があるか
  4. 回数:1日の入浴や移乗の、おおよその回数

福祉用具は、「置いてある」と「使っている」が違います。ふだんの介助で使っているかを、一言聞いておきます。

聞き方は、見学・面接で聞くことにまとめました。

次の見学で聞くことを、1つだけメモに書いておいてください。

ぎっくり腰で仕事を休むとき:迷う朝・連絡・労災

ぎっくり腰の日は、まず休むことを考えます。痛む腰で介助をすると、自分だけでなく、介助される人も危なくなります。

私は1人の日に、休むと言い出せませんでした。今なら、まず連絡を入れて、代わりを相談します。

迷う朝は、介助できるかで決める

看護師もPTも、仕事の多くは人の体を支えることです。迷う朝は「今日、患者さんを支えきれるか」で考えます。

  1. 前かがみや立ち上がりで、強い痛みが走る
  2. 人を支えようとすると、腰に力が入らない
  3. 痛みをかばって、歩き方が変わっている

どれかに当てはまるなら、休む連絡を入れます。介助の途中で動けなくなると、患者さんが転ぶおそれがあります。

たかし(PT)・しょんぼり
あの土曜日のぼくは、リハがほかにいないから休めないと思い込んでいたよ。
えみみ(Ns)・説明中
介助の途中で動けなくなるほうが、現場は困るよね。早く連絡すれば、代わりを探す時間ができるし。

何日休むかは、受診して医師と相談して決めます。私はあの土曜日のあと、2〜3日ベッドから起き上がれませんでした。

休む連絡は、短くていい

連絡は、職場で決まっている相手に、できるだけ早く入れます。理由を長く説明しなくて大丈夫です。

診断書が必要かどうかは、職場の決まりで変わります。就業規則か、上司に確かめます。

戻る前に、重い介助を相談する

痛みが引いても、すぐに元の動きに戻れるとは限りません。戻る日の前に、上司に次のことを相談しておきます。

  1. 移乗や入浴など、重い介助をしばらく外してもらう
  2. 重い介助は、2人で行う
  3. 記録や外来など、体を使う量が少ない仕事に回してもらえるか聞く

どこまで配慮してもらえるかは、職場の人数で変わります。受診したときに、仕事で気をつけることを医師に聞いておくと、伝えやすくなります。

仕事中のぎっくり腰と、労災

厚生労働省のリーフレット「腰痛の労災認定」(2025年3月版)は、ぎっくり腰の扱いをこう説明しています。

  1. ぎっくり腰は日常の動作で起きるので、仕事中に起きても、それだけでは労災補償の対象にならない
  2. ただし、起きたときの動作や姿勢に無理があり、腰に強い力がかかった場合は、認められることがある
  3. 例に挙がっているのは、重い物を運んでいて転んだ、思ったより重い物を持った、無理な姿勢で持ち上げた、など

当たるかどうかは、自分では決められません。 迷ったら、職場の担当者か、労働基準監督署に相談します。

労災保険相談ダイヤル(0570-006031・平日8:30〜17:15・通話料がかかります)でも、一般的な質問を受け付けています。

仕事が原因でない病気やけがで、休むあいだ給料が出ないときは、健康保険の傷病手当金があります。

しくみは、体や心がつらいときは、先に休むにまとめました。

若いうちに考えておく、腰に頼りすぎない働き方

一度痛めた腰は、あとまで残ることがあります。えみみは今も痛む日があり、私も数年に1回はぎっくり腰になります。

若いうちは、体が多少きつくても、体力でなんとか乗り切れてしまいます。

でも、同じ無理をずっと続けないほうがいい、と今は思います。

だから、痛みが落ち着いているうちに、腰に頼りすぎない働き方を考えておきます。

  1. 設備と人数がそろった職場に移る:同じ職種・同じ分野のまま、負担を減らす
  2. 介助の少ない分野に移る:外来など。訪問は運転、通所は送迎や入浴の介助があり、どこでもゼロにはならない
  3. 体を使う時間を減らす:時短・パートにする、ケアマネジャーや相談の仕事に移る

私は40代で、訪問看護ステーションに移りました。決め手は、子どもの送迎に間に合う時間に帰れることでした。

腰は、直接の理由ではありません。ただ、20代のあの土曜日から、腰の負担のことはずっと頭のすみにありました。

えみみ(Ns)・にっこり
職場を変えるときの条件に、「腰」を入れておくといいよ。私はずっとそうしてる。

働き方を変える形は、理学療法士をやめてよかった人・後悔した人の違いにもまとめました。

3つのうち、5年後の自分に合いそうなものを1つ選んでおいてください。

腰のことを、面接でどう話すか

腰のことは、隠さなくて大丈夫です。ただ「腰が悪いのでできません」ではなく、次の職場で大事にしたい条件として話します。

たとえば、「前の職場で腰を痛めました。福祉用具を使って介助する職場で、長く働きたいと考えています」と伝えます。

退職理由の言い換え方は、看護師・PTの退職理由、面接での言い換え例にまとめました。

次に読む

目的に合わせて選んでください。

  1. 見学で設備や人数を聞きたいとき:見学・面接で聞くこと
  2. 腰のことを退職理由として話すとき:看護師・PTの退職理由、面接での言い換え例
  3. 看護師で、辞めたい理由を整理したいとき:看護師を辞めたいのに決められないとき
  4. PTで、職場を変えるか迷うとき:理学療法士をやめてよかった人・後悔した人の違い

調べ方と限界

この記事の材料は、次のとおりです。

  1. 体験:たかしとえみみの話(2026-10-31に聞き取り)。えみみの話は、本人の了承を得て載せています
  2. 制度と予防:厚生労働省のリーフレット「腰痛の労災認定」(2025年3月版)、「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)、保健衛生業の腰痛予防のページ(2026-10-31確認)

腰の痛み方や治り方は、人によって違います。この記事は、治療の方法を示すものではありません。

たかしとえみみの話には、場面をわかりやすくするために、まとめ直したところがあります。

よくある質問

腰痛で仕事を辞めるのは、甘えですか?

甘えではありません。厚生労働省の腰痛予防の指針でも、介護・看護での人の抱え上げは、腰に著しい負担がかかるとされています。体の負担は、本人の頑張りだけでは減りません。ただ、辞めると決める前に、その負担が「職場を変えれば軽くなるものか」を分けて考えると、選べる道が増えます。

腰痛があっても、看護師やPTを続けられますか?

続けている人はいます。私たち夫婦も、腰を痛めたあとも働いています。ただ、同じ職場で同じ動きを続けられるかは別の話です。電動ベッド、リフトなどの福祉用具、重い介助を2人で行う決まりがあるかで、腰の負担は変わります。痛みやしびれが強いときは、医療機関で診てもらい、働き方も相談してください。

面接で、腰痛のことを話すべきですか?

仕事でできない動きがあるなら、伝えておいたほうが、入ってからのずれが少なくなります。そのときは「腰が悪いのでできません」ではなく、「福祉用具を使って介助する職場で、長く働きたい」のように、次の職場で大事にしたい条件として話します。

看護師がぎっくり腰で仕事を休むのは、迷惑ですか?

迷惑ではありません。痛む腰で介助を続けると、途中で動けなくなり、患者さんを危ない目にあわせることがあります。休む連絡は、早く短く入れれば十分です。何日休むかは受診して医師と相談し、わかった時点で職場に見込みを伝えてください。

仕事中のぎっくり腰は、労災になりますか?

厚生労働省のリーフレットでは、ぎっくり腰は日常の動作で起きるため、仕事中に起きても、それだけでは労災補償の対象にならないとされています。ただし、起きたときの動作や姿勢に無理があり、腰に強い力がかかった場合は、認められることがあります。迷ったら、職場の担当者か労働基準監督署に相談してください。

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