腰を痛めたPT・看護師は現場を続けられる?|ぎっくり腰で1日働いた夫と、職場を変えた妻の話
目次
ぎっくり腰は「魔女の一撃」とも呼ばれます。前ぶれなく来て、しばらく動けなくなる痛みです。
腰を痛めると「この先も現場を続けられるのかな」と不安になります。私たち夫婦も、それぞれ腰で悩んできました。
この記事は、医療の仕事で腰を痛めた私たちが、そのあと働き方とどう向き合ってきたかの話です。治療の方法は書いていません。
腰で悩んでいる医療職の人が、この先の働き方を整理する手がかりになればうれしいです。
私はPTで、病院と老健を経て、40代で訪問看護ステーションに移りました。妻のえみみは看護師で、4回職場を変えています。
えみみは、職場を変えて、仕事中の腰の負担が軽くなりました。それでも、痛めた腰は今も痛む日があります。
痛みやしびれが強いときは、まず医療機関で診てもらってください。
夫婦それぞれの腰の話
私は1日の強い痛みで、えみみは毎日の積み重ねで腰を痛めました。痛め方は違っても、どちらも働き方を考え直すきっかけになりました。
たかし:リハが1人の土曜日に、ぎっくり腰
20代のころ、病院で病棟と通所リハを掛け持ちしていました。土曜日には、通所リハの当番が回ってきます。
その当番の日に、ぎっくり腰になりました。その日、リハの職員は私1人です。帰るに帰れず、なんとか1日働きました。
家に帰ってから、2〜3日はベッドから起き上がれませんでした。そのあともしばらく、また痛めるのではと不安が続きました。
それ以来、頻繁ではありませんが、数年に1回はぎっくり腰になります。いちばんひどかったのは、あの土曜日です。
このとき、「将来、腰に負担がかからない働き方を考えておかないといけない」と思いました。
エンドフィールは、関節を動かしきったところで感じる「ここが終わり」の手ごたえのこと。PTやOTが使う言葉です。
えみみ:低いベッドの病院で、毎日の介護
えみみが腰を痛めたのは、2つ目の職場の病院です。設備が古く、ベッドは高さが上がらない低いものだけでした。
その低いベッドで、毎日、患者さんの介護をしていました。前かがみの姿勢が、毎日続きます。
それからは、職場を変えるたびに「腰の負担が少ない現場」を、優先順位の高い希望に入れています。
次の職場では、リフトなどの設備がそろい、ベッドも高く上がりました。持ち上げる・移す・抱える回数そのものが減りました。
「辞める」と決める前に、3つに分ける
腰の悩みは、今の痛み・この職場の負担・この先の年齢の3つに分けます。3つが混ざったままだと、「辞めるしかない」に見えやすくなります。
- 今の痛み:まず休んで、医療機関で診てもらう。辞めるかどうかは、痛みが落ち着いてから考える
- この職場の負担:ベッドの高さ・リフトの有無・抱える回数・1人で介助する場面の数
- この先の年齢:40代・50代になっても、同じ動きを毎日続けられるか
1は、時間がたつと変わります。2は、職場を変えると変わることがあります。3は、早めに考えるほど選べる道が増えます。
えみみの場合、つらかったのは2でした。職場を変えて、仕事中の負担は軽くなりました。
私の場合は、1の痛みが引いたあとに、3の不安が残りました。
3つのうち、いちばん重いものに印をつけてみてください。
腰の負担は、職場で変わる
同じ看護師やPTでも、腰の負担は職場で大きく変わります。分かれ目は、人の力だけで抱えているかどうかです。
国の指針にも、同じことが書かれています。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)は、介護・看護の作業について次のように定めています。
- 移乗・入浴・排泄の介助で、全介助の人にはリフトなどを積極的に使う。原則として、人の力だけで抱え上げない
- ベッドのそばの作業は、立って前かがみにならない高さまで電動で上がるベッドを使い、各自で高さを合わせる
えみみがいた低いベッドの病院は、この2つ目と逆でした。 指針があっても、職場の設備がそろっているとは限りません。
リフトを入れる、ベッドを買い替えるといったことは、職員が頑張ってもすぐには変わりません。
だから、職場を選ぶときに設備を確かめる、重い介助は2人で頼むなど、自分でできるところから手を打ちます。
| 見るところ | 腰の負担が重くなりやすい | 軽くなりやすい |
|---|---|---|
| ベッド | 高さが変えられない | 電動で高さが変えられる |
| 移乗 | 人の力だけで抱える | リフトやスライディングボードを使う |
| 人数 | 1人で介助する場面が多い | 重い介助は2人で行う決まりがある |
| 1日の量 | 入浴や移乗の回数が多い | 回数を分け合える人数がいる |
職場の種類だけでは決まりません。同じ病院や施設でも、設備と人数で違います。
PTなら、病棟やリハ室での介助に加えて、送迎での乗り降りや車の運転の時間も、腰に関わります。
見学で確かめること
設備のことは、求人票にはほとんど書かれていません。見学で、目で見て確かめます。
- ベッド:電動で高さが変わるか。病室や居室で実際に見る
- 福祉用具:リフトやスライディングボードがあるか。ふだんから使っているか
- 人数:重い介助は何人で行うか。1人になる日や時間帯があるか
- 回数:1日の入浴や移乗の、おおよその回数
福祉用具は、「置いてある」と「使っている」が違います。ふだんの介助で使っているかを、一言聞いておきます。
聞き方は、見学・面接で聞くことにまとめました。
次の見学で聞くことを、1つだけメモに書いておいてください。
ぎっくり腰で仕事を休むとき:迷う朝・連絡・労災
ぎっくり腰の日は、まず休むことを考えます。痛む腰で介助をすると、自分だけでなく、介助される人も危なくなります。
私は1人の日に、休むと言い出せませんでした。今なら、まず連絡を入れて、代わりを相談します。
迷う朝は、介助できるかで決める
看護師もPTも、仕事の多くは人の体を支えることです。迷う朝は「今日、患者さんを支えきれるか」で考えます。
- 前かがみや立ち上がりで、強い痛みが走る
- 人を支えようとすると、腰に力が入らない
- 痛みをかばって、歩き方が変わっている
どれかに当てはまるなら、休む連絡を入れます。介助の途中で動けなくなると、患者さんが転ぶおそれがあります。
何日休むかは、受診して医師と相談して決めます。私はあの土曜日のあと、2〜3日ベッドから起き上がれませんでした。
休む連絡は、短くていい
連絡は、職場で決まっている相手に、できるだけ早く入れます。理由を長く説明しなくて大丈夫です。
診断書が必要かどうかは、職場の決まりで変わります。就業規則か、上司に確かめます。
戻る前に、重い介助を相談する
痛みが引いても、すぐに元の動きに戻れるとは限りません。戻る日の前に、上司に次のことを相談しておきます。
- 移乗や入浴など、重い介助をしばらく外してもらう
- 重い介助は、2人で行う
- 記録や外来など、体を使う量が少ない仕事に回してもらえるか聞く
どこまで配慮してもらえるかは、職場の人数で変わります。受診したときに、仕事で気をつけることを医師に聞いておくと、伝えやすくなります。
仕事中のぎっくり腰と、労災
厚生労働省のリーフレット「腰痛の労災認定」(2025年3月版)は、ぎっくり腰の扱いをこう説明しています。
- ぎっくり腰は日常の動作で起きるので、仕事中に起きても、それだけでは労災補償の対象にならない
- ただし、起きたときの動作や姿勢に無理があり、腰に強い力がかかった場合は、認められることがある
- 例に挙がっているのは、重い物を運んでいて転んだ、思ったより重い物を持った、無理な姿勢で持ち上げた、など
当たるかどうかは、自分では決められません。 迷ったら、職場の担当者か、労働基準監督署に相談します。
労災保険相談ダイヤル(0570-006031・平日8:30〜17:15・通話料がかかります)でも、一般的な質問を受け付けています。
仕事が原因でない病気やけがで、休むあいだ給料が出ないときは、健康保険の傷病手当金があります。
しくみは、体や心がつらいときは、先に休むにまとめました。
若いうちに考えておく、腰に頼りすぎない働き方
一度痛めた腰は、あとまで残ることがあります。えみみは今も痛む日があり、私も数年に1回はぎっくり腰になります。
若いうちは、体が多少きつくても、体力でなんとか乗り切れてしまいます。
でも、同じ無理をずっと続けないほうがいい、と今は思います。
だから、痛みが落ち着いているうちに、腰に頼りすぎない働き方を考えておきます。
- 設備と人数がそろった職場に移る:同じ職種・同じ分野のまま、負担を減らす
- 介助の少ない分野に移る:外来など。訪問は運転、通所は送迎や入浴の介助があり、どこでもゼロにはならない
- 体を使う時間を減らす:時短・パートにする、ケアマネジャーや相談の仕事に移る
私は40代で、訪問看護ステーションに移りました。決め手は、子どもの送迎に間に合う時間に帰れることでした。
腰は、直接の理由ではありません。ただ、20代のあの土曜日から、腰の負担のことはずっと頭のすみにありました。
働き方を変える形は、理学療法士をやめてよかった人・後悔した人の違いにもまとめました。
3つのうち、5年後の自分に合いそうなものを1つ選んでおいてください。
腰のことを、面接でどう話すか
腰のことは、隠さなくて大丈夫です。ただ「腰が悪いのでできません」ではなく、次の職場で大事にしたい条件として話します。
たとえば、「前の職場で腰を痛めました。福祉用具を使って介助する職場で、長く働きたいと考えています」と伝えます。
退職理由の言い換え方は、看護師・PTの退職理由、面接での言い換え例にまとめました。
次に読む
目的に合わせて選んでください。
- 見学で設備や人数を聞きたいとき:見学・面接で聞くこと
- 腰のことを退職理由として話すとき:看護師・PTの退職理由、面接での言い換え例
- 看護師で、辞めたい理由を整理したいとき:看護師を辞めたいのに決められないとき
- PTで、職場を変えるか迷うとき:理学療法士をやめてよかった人・後悔した人の違い
調べ方と限界
この記事の材料は、次のとおりです。
- 体験:たかしとえみみの話(2026-10-31に聞き取り)。えみみの話は、本人の了承を得て載せています
- 制度と予防:厚生労働省のリーフレット「腰痛の労災認定」(2025年3月版)、「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)、保健衛生業の腰痛予防のページ(2026-10-31確認)
腰の痛み方や治り方は、人によって違います。この記事は、治療の方法を示すものではありません。
たかしとえみみの話には、場面をわかりやすくするために、まとめ直したところがあります。
よくある質問
腰痛で仕事を辞めるのは、甘えですか?
甘えではありません。厚生労働省の腰痛予防の指針でも、介護・看護での人の抱え上げは、腰に著しい負担がかかるとされています。体の負担は、本人の頑張りだけでは減りません。ただ、辞めると決める前に、その負担が「職場を変えれば軽くなるものか」を分けて考えると、選べる道が増えます。
腰痛があっても、看護師やPTを続けられますか?
続けている人はいます。私たち夫婦も、腰を痛めたあとも働いています。ただ、同じ職場で同じ動きを続けられるかは別の話です。電動ベッド、リフトなどの福祉用具、重い介助を2人で行う決まりがあるかで、腰の負担は変わります。痛みやしびれが強いときは、医療機関で診てもらい、働き方も相談してください。
面接で、腰痛のことを話すべきですか?
仕事でできない動きがあるなら、伝えておいたほうが、入ってからのずれが少なくなります。そのときは「腰が悪いのでできません」ではなく、「福祉用具を使って介助する職場で、長く働きたい」のように、次の職場で大事にしたい条件として話します。
看護師がぎっくり腰で仕事を休むのは、迷惑ですか?
迷惑ではありません。痛む腰で介助を続けると、途中で動けなくなり、患者さんを危ない目にあわせることがあります。休む連絡は、早く短く入れれば十分です。何日休むかは受診して医師と相談し、わかった時点で職場に見込みを伝えてください。
仕事中のぎっくり腰は、労災になりますか?
厚生労働省のリーフレットでは、ぎっくり腰は日常の動作で起きるため、仕事中に起きても、それだけでは労災補償の対象にならないとされています。ただし、起きたときの動作や姿勢に無理があり、腰に強い力がかかった場合は、認められることがあります。迷ったら、職場の担当者か労働基準監督署に相談してください。
次の一歩
転職の全体マップ
転職は6つの工程に分けて考えると、次にやることが見えます。